その夜はよく晴れていた。
今日のような台風の荒れ模様ではなく…
それが例え旅路になんの影響を及ぼさないとしても、旅立ちにはもってこいの夜だっただろう。
彼女は旅立った…いや、帰ったのだ。
銀河と呼ばれる天空の大海原へ。
今後も深淵なる闇と呼ばれる存在を追い、天空を駆け巡るのだろう。
それがまた、アストルティアと交差する時、再び現れるかもしれない。
あさげじゃ。
ヤツとの付き合いも長くなったものじゃ。
もともと身体を貸したことがはじまりという奇妙な縁であったのう…
いくらか奇妙な人物でもあったが、おかげで我の魂も元に戻り、こうして元の通りに生きておる。
ああ見えてなかなか義理堅い人間なのじゃ。
それを知る者は少ないがの。
それでな、昨日突然ヤツが訪ねてきてのう…
かねてより少しは聞いておったが、邪悪なる意志との決着もつき、それそのものはヤツがこちらへ来るきっかけとなった闇の存在とは異なることがわかったことなどがあり、一段落もついたところで報告なども兼ねて帰らねばならんということじゃった。
吾輩たちアストルティアの民には少々掴みかねるが…
遠く天空の上らしいの…我にはちょっと想像もつかん。
どんなところから来たのじゃろうな…
このような門をくぐり転移するとかなんとか言っておったが…「旅の扉」みたいなものを一時的に出現させる呪文みたいなものじゃろうかな。
アストルティアの文明ではわからぬことがまだまだ世の中には多く、そしてこの世は広いということじゃな。
あれと我と二つの人格としてはっきりと具現化…いやもとどおりになってから、うっとおしく感じたこともあるが、いなくなってしまうと少々寂しいものよな。
ま、あれのことじゃ、唐突にまた現れるに相違なかろう。
何よりアストルティアよりはるかに進んだ文明を持つ輩なのだからな。
人知れず、夜に旅立つと聞いて我はな、ツスクルの夜空を見上げたのじゃ。
ハカセがいるのはどの辺じゃろうと。
あの鳥の翼のように見える星達の先端じゃろうかとかな。
お月さんよりはるかに遠いところだと聞いておる。
グランドタイタス号よりもはるかに大きな天翔ける船で彼女は天空を駆けているのじゃ。
夜空に浮かぶ星、あれは全て大きな球体の物質であり、様々な自然環境があって中にはアストルティアのように生命があり、文明を持っている星もあると語ってくれたことがある。
彼女の仕事はその研究・調査と文明の保護。
そうやってアストルティアにもやってきたわけじゃ。
我々はあまりにもアストルティアについて知らなすぎる。
ついこの間まで、お月さんに生き物がいることも、人が住んでいることも知らなかったのじゃ。
それどころか、5大陸の外の海にすら未だ出ることが叶っておらぬ。
もしかしたら未だ見ぬ大地があるやもしれぬ。
5大陸ですら、未踏の地が存在するのじゃ。
我はもっと知りたい。
彼女が守ってくれた我々のアストルティアについてのう。
我も冒険の旅とやらに出てみるとするかの