カランカラン♪
外のゲートに備え付けてある鐘が鳴り、来客があることを知らせる。
「人数が多いようですね、あの依頼を受注した冒険者達ではないでしょうか?」
そう言ったのは「プクえもん」私の制作したプク型助手カラクリだ。
長いことネジが足らないまま失踪していたが、ようやく帰ってきたのだ…
『なんだ…こいつらは…本当に冒険者なのか?』
もともと人見知りな私は玄関のドアをそっと開け隙間から覗き見ると…そこから見える姿に不信感を募らせた。
冒険者っぽいのも数名見受けられるが…
怪人系モンスターのようにしか見えない連中が多数、そこには並んでいたのである。
(もしかして…これはハロウィンのお祭りってやつか?
大きなお友達がお菓子をくれなきゃいたずらするぞ!って来ちゃったのか?)
とりあえず…一応話を聞いてみることにすると、どうやらレンドアで依頼を受注してきた冒険者の一団らしい。
本当かどうかは疑わしいがな…
何しろこいつら、報酬や依頼内容ちゃんと依頼書に記載していたというのに…やれ「報酬はいくらだ?」「危険な依頼ではないのか」だの、やる気があるのかないのかわからないのだ。
挙句、「こんな仕事するために冒険者になったんじゃない!」などと言い出す者までいるくらいだ。
うむ、間違いない、こいつらはキーエンブレムなどひとつも貰ってないに違いないな。
なんのために依頼を出したのか理解しておらず、どうも自分たちは既に受注して我が研究所に来たことすらわかっていないらしい。
とりあえず、後でオットーのところにクレームを入れよう。
もっとも、私としてはここでお断りして他の冒険者を探してもらうように依頼を出しなおすつもりだったが少しはやる気になったのか結局連中が行くということで話はまとまった。
『よし、プクえもん例のものを出せ!』
そうやってプクえもんから受け取ったアイテムは指輪…
そう、これもある力を秘めた私の制作物だ。
これには指輪に嵌められた魔晶石から照射された光を浴びた対象を小さくする効果がある。
ちなみに、元に戻す力はない。
ワンウェイだ。アッハッハッハ!
しかし案ずることはない、これに対なる対象を大きくする力を秘めた指輪を制作したのだからな、さすが私は天才だ。
そして、ドブに落としたのは件の「対象を大きくする力を秘めた指輪」
この手元に残った指輪の力で冒険者達を小さくし、そして狭い下水道を探索してもらうという算段だ。
そのことを伝え、単体では元に戻す力がないことを伝えると当然、冒険者達からは文句が出る。
「これじゃあ、モルモットじゃないか!」
「もし、それで失敗したらどうするんだ!」
いや、人の話は最後まで聞いて欲しい。
それと、失敗したらその時はその時…だと思うが…その時は魔法がとけて下水が詰まる…だろうか。
ではなく、危険がついてまわるから冒険者に依頼するのだが…
ブーブー文句を言う冒険者達に回収対象の指輪に元に戻す力があること、そして小さくなることでドブに住むネズミやら虫の類がモンスターのような強さに感じられてしまうため、命の危険があることを承知していてその上で多めの報酬を討伐依頼本部に支払っていることを伝えて納得してもらう。
ついでにここだけの話、私に錬金石の研究依頼をしてくる商会に彼らのことを教えることで名声も少しばかりプレゼントしてあげるつもりでいた。
もちろん、成功したらの話だが。
もっとも、対になる指輪の力がなくとも…「シャナク」という古代呪文を使えばもとに戻るのだが…
そんな使い手に出会うことは困難だろう。
私も「あさげ」の知り合いにそんな術者がいるということで知ったくらいだからな。
冒険者達と都度連絡が取れるように「通信」の魔法力を仕込んだ不思議な真珠「リンクパール」を持たせ、指輪の力で小さくしてポーチに入ってもらい…アズランの銭湯へと向かう。
そこの排水口から紐を使って潜入してもらうというわけだ。
探索が無事終了したら、またここから回収する手はずにしてある。
私は研究者である以前に人だ。
全員無事に帰ってきて欲しい。
そう願って…ひとまずこの場を離れた。
~つづく~