夏です。
アズランの夏。
入道雲に夕立、蝉時雨、そして打ち水。
夜になれば開演される虫たちの演奏会。
裏の川などは蛍がひとつふたつと舞い、それは幻想的な空間になる。
そんな夏を邪魔するもの。
「蚊」
この飛び回る音、不快なことこの上なし。
血を吸うだけならまだよし。
腹が減っておるのだろう。
多少採られたところで死にはしない、少しくらいわけてやる気前の良さは持っているつもりだ。
だが、こいつらと来たら飯代のつもりか猛烈な痒みを置いていきおる。
そして腫れもな。
その上、伝染病まで媒介するのだから、まこと質が悪い。
恩を仇で返すとはまさにこいつの為にある言葉だ。
こんな恩知らずは家に入れるわけにはいかん。
快適な夏が過ごせますように。
願いを込めて火をつける。
金鳥の夏 アズランの夏
ハカセ記